長門有希の親友


(何故、朝倉涼子が彼を殺そうとしたのか理解できない)
長門有希は、自宅に帰ると今読破中の分厚い本を広げた。


(不可解に朝倉涼子は攻撃を加減していた……何故?)


長門の疑問は募るばかりだった。

そのとき長門の読んでいた本の間から1枚の四つ折になった紙が落ちた。

「これは……」

長門はそれを拾い上げ、いつもの読書以上に熱心に読み始めた。


朝倉涼子の字だった。


「…………」

そこには、今回の事件の目的、長門への詫びの文がつづられていた。

『この手紙を読んでるって事は私はもうあなたに削除されちゃった後なのかな?本当はこんな手紙残すつもりはなかったんだけどあなたには知ってもらいたくて。別に言い訳をするつもりじゃないの。あなたには謝りたくて。多分私はあなたに重大な損傷を負わせてしまっているでしょう。その事や彼の命を狙ったこと。でもこの手紙を読んでるって事はあなたは無事なのよね?当然彼も。本当は私だってあなたに削除されることなんて望んじゃいなかったわ。ずっとあなたと一緒に居られたらいいと思ってた。本当はすごく悲しくて、辛くて、怖いんだ。でもこれが私の使命なの。だからこれでさよなら。またいつかきっとどこか出会えることを願っています。               “DEAR MY BEST FRIEND”  朝倉涼子


「親友……」

小さく長門はつぶやき、また紙へと視点を落とした。


『P.S お鍋にあなたの好きなおでんを作っておきました。もしよかったら腐らないうちに食べてね』


「おでん……」

長門が台所に向かうとコンロの上のなべにはおでんが作られていた。
長門は練りからしのチューブと箸、皿を持っておでんを盛り付けてコタツに腰掛けた。


音のない、熱のない部屋の中でそのおでんは確かな温かさを長門に与えてくれた。

「おいしい……」

思わず出た言葉に長門はわずかな孤独を感じていた。

「またいつか……」

朝倉の手紙のフレーズを長門は無意識に口にしていた。



そしてまたふたりは再開する。
春の心地よい暖かさの中ではなく、冬の刺さるような寒さの中、変わってしまった世界の中で────

おわりに

原作になるべく沿った形でSSを作りたかったのですが、結構ずれてしまいました。
最後まで読んでくださった方ありがとうございます。
この話を始めて読んだ方はタグから前回のも読んでみてくれるとうれしいです。
ではまたいつか書く機会がありましたら書きたいと思います。


読んでいただきありがとうございました。